40代独身。北海道のホールに勤務していたが閉店に伴い職を失った。会社都合なので失業保険は、半年間は支給されることになった。
求職活動以外やることもない。ケータイをかけ放題プランに変更した。理由は寂しくて仕方ないので、誰かと電話したくなったためだ。
最初は地元の観光協会や旅館に電話して、観光スポットや部屋の様子などを聞いた。別に旅行に行くわけではなく、ただ、話し相手が欲しかったからだ。
それも一段落して、次に電話を掛けて行ったのが全国のホールだった。ピーワールドには各ホールの電話番号が掲載されている。北海道からスタートして営業確認の意味も含めて全国のホールへ電話を入れた。
電話の仕方としては「最近こっちに引っ越してきたので」という体を取り繕った。電話する内容には必ず聞くことを加えた。
それは休憩時間と交換率だ。
さすがに交換率を教えてくれるホールは少なかったが、それでも6店舗ほど教えてくれたホールがあった。
休憩時間は都会ほど短く都内では30分。それ以外は40分。田舎になると最長で90分というホールもあった。
電話は大抵は事務所につながるが、中には未だにカウンター横にかかるホールもあり、騒音から暇な店で判別がついた。
一番面白かったのが奄美島のホールで、営業時間は「客が来たら店を開ける」というものだった。隣が自宅なので、客は午前中店が開いていなければ、自宅のピンポンを鳴らす。何とも牧歌的だ。
全店コンプリートするまでに7カ月間を要した。
その労力を就活に使えよという天の声が聞こえてくる。