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[ 2010-12 -11 00:01 ]
2010年 12月 11日 ( 1 )
パン屋を始めたきっかけが面白い。
店の主人はクルマのセールスマンだった。その時の客がパン屋さんだった。
「これからは手づくりパンがうける」と勧められて、脱サラでパン屋を開業することを決意する。
顧客の店で1年半の修行を経て、30年前、32歳の時に自分の店を持つ。
当時、手づくりパンは珍しかった。
焼きたての美味しさ、さらには中学校の正門前、という立地条件が相まって、瞬く間に人気店となった。
中学生が昼食用にパンを買って学校に行った。
店の前には朝から中学生たちの長蛇の行列ができた。その行列を見て「美味しいパン」の噂は瞬く間に口コミで広がり、店は大いに繁盛した。
開業して15年間ぐらいは、本当に儲かった、という。
中学校の前に店を構えたことは「われながら最高の場所を選んだ」とほくそえんだ。学校がある限り店は潰れることはない、と信じて疑わなかった。
「運動クラブに入っている子らは、食欲旺盛で1人で1000円分のパンを買ってくれた。昼過ぎにはパンも売り切れた」と主人は述懐する。そう、述懐なのだ。
15年前から徐々にパンが売れなくなってきた。
「昔は500円分ぐらいは買ってくれたのに、最近の子はパン1個という子が増えた。こんなんで、お腹が持つのか、と聞くんですがね」
個人のパン屋の敵は、近所に増えたコンビニだった。
コンビニならおにぎりからパン、お菓子まで何でも揃う。コンビニで中学生の買い物は完結してしまう。
コンビニが潰しているのは個人のタバコ屋だけでなく、パン屋にまでその触手を延ばしてきていた。
取材に行った時間は夕方5時過ぎ。
店には結構パンが残っている。

「昔ならこんなにパンが残ることもなかったんですがね」といいながらサンドイッチから菓子パン、調理パンをみつくろってお土産にしてくれた。
レジの前で立ち話でノートを広げながら主人の話しを聞いていた。
その光景を見た、客の女子中学生の2人連れが「何?何?テレビの取材?」
テレビカメラもないのにテレビの取材もないだろうに。
でも、取材ということは分かったようだ。
中学校の前なので中学生がいる限り「店は安泰」という方程式が通用しなくなったことを肌で感じ取っている。それほど最近の子供の嗜好が変わってきている。
パソコン、ケータイ、コンビニという便利の三種の神器が、現代人をみょうてこりんに変えていっている。
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