海上自衛隊の「特別警備隊」内でも時津風部屋のような“かわいがり”が常態化していることが死亡事故によって明らかになった。
現場は隊員を養成する江田島市の第1術科学校だった。生まれ故郷で小学生の時、一度だけ見学に行ったことがある。
そこは旧海軍兵学校。海上自衛隊に名称は変われど海軍魂が脈々と受け継がれている。
特別警備隊は1999年、能登半島沖で北朝鮮の不審船を取り逃がしたことに端を発し2001年3月に江田島基地に正式に組織された。
死亡事故があったのは特別警備隊の隊員を養成する学校のようなところ。厳しさでは映画「海猿」で話題になった海難救命士以上かもしれない。なにせ、海上でのテロ組織との戦いになるわけで、常に命の危険性が伴う。そのためにも、強靭な肉体と精神を養わなければいけない。
特別警備隊に入隊するには自ら志願するようだ。
訓練映像は過去に一度だけ公開された。全身黒づくめのいで立ちで特殊高速ゴムボートで不審船に乗り込んで行く映像が繰り返し流されているが、日常の訓練は極秘だろう。
そもそもがテロ対策なので情報は出せない、というのが実情か。
自ら志願しながらも、過酷な訓練について行けずに脱落者も出る。
そういう根性のないものを「異動のはなむけ」と称して、集団で訓練という名のリンチを加えることが、習わしのようだ。
特別警備隊のはなむけは1人で15人と格闘技を行わなければならない。1人50秒ほどだというが、何度も何度も倒されながら、立つのがやっとの状態だったと想像できる。14人目であごにパンチが当たり意識を失い、2週間後に急性硬膜下血腫で搬送先の病院で亡くなった。
海上自衛隊では時津風部屋の教訓は生かされなかった。
相撲部屋で脱走した力士をかわいがり、と称していたぶるのとニュアンスは近い。
両方とも死亡事故になったので明るみになったが、日本流にいうならば、おとしまえか。ヤクザの組みぬけなら小指をさしだすか、リンチを加えられるか。
これは日本の社会にはどこにでも潜んでいそうな問題ではある。
人気ランキング