ダメ虎から学ぶ人生哲学の1冊
2008年 10月 04日
巨人が猛烈な追い上げを見せて同率の首位に並んでいる。最も去年からはクライマックスシーズンが採り入れられているので優勝しても日本シリーズには出られないこともある。
ソニー・マガジンから出版されている「人生哲学 阪神タイガース的」の著者ひろさちやさんもさぞかしヤキモキしているかと思いきやそうでもない。
御年72歳。
東大文学部印度哲学科を卒業。気象大学で20年間教壇に立つ。仏教を分かりやすく解くことで定評がある。

化石的阪神ファンを自認する著者は、阪神ファンを「阿呆」と言い切る。
負けても負けても応援し続けるこの阿呆さ加減。阿呆と自覚している人こそが「賢い人」。ソクラテスの「無知の知」につながる、という。
著者自身が阪神ファンの一人として長年“阿呆”の修行を積んだ結果「心の平安」を会得できた、という。
哲学者ソクラテスの妻クサンチッペは天下の悪妻として名を馳せた。どうしてソクラテスのような賢者が悪妻をもらったか。
それはこんな理由からだ。
馬を上手に扱おうと思えば、おとなしい馬よりも荒々しい馬を扱った方がどんな馬でも簡単に手なづけられるようになる。
人間の付合いも同じ。
クサンチッペのような悪妻をもらい、耐え忍ぶことを学ぶことで、他のどんな人間とも易々と付き合っていける、と確信したからだ。
ソクラテスのことばに有名な一説がある。
「きみがよい妻を持てば幸せになるであろうし、悪い妻を持てば哲学者になれる」
阪神ファンは愚妻を娶った哲学者ということになる。
筆者は若者で哲学者や仏教思想家になりたい人には、迷わず阪神ファンになることを薦める。
そんなことが書かれているタイガース本なので、タイガースファン以外が読んでも哲学的見地から人生の参考になることが結構ある。
例えば、欠点を個性と思って無理に直すことはない、と断言する。
イチローの振り子打法は入団当初は監督やコーチから認められず、打撃フォームを改造するように命じられるがイチローは自分のやり方を通した。
そのおかげで2軍に落とされたが、新たに監督になった仰木監督がイチローの才能を見抜き、1軍で使うようになって才能を開花させ、世界的なバッター、となった。
こんな例は稀だが、欠点を無理に矯正すると個性が失われることの方が問題だという。怠け者はもっと怠け者になって個性を伸ばせという。これは目から鱗的発想。生きていくことが楽になる。非常に感銘を受ける一節だ。
ある意味、人生の哲学書でもある。
阪神ファンでなくても社会で生きていくための哲学的示唆が随所にちりばめられている。
元阪神の監督も経験し、今は楽天の野村監督は筆者の天敵。アンチ野村には、溜飲を下げられる章もあることを付け加えておく。
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