昼過ぎ。12時40分だった。店内外に並んでいる客もなく、すぐに座れた。
約半年振り。当分閉店していたが最近再開したようなので、息子がどのように変化しているかドキドキもので様子を伺っていた。
するとある変化が。
帰る客に「ありがとうございました」と声をかけるようになっている。これまでにはなかった変貌振り。
しかし、息子とおかあちゃんは会話もなく黙々と仕事をするばかり。重たい空気は以前と変わっていない。
その後客が続々と入ってきた。
2組8人。
店が再び忙しくなる。
おかあちゃんの注文が間違ったときだった。
あの爬虫類のような目つきでおかあちゃんをにらみつけると「ちゃんとせえや」と小声でなじっているのを見逃さなかった。そのほかおかあちゃんに向かって「はよ、せえや」とぶつぶつ。
全然変わっていない。
この店に初めて来たと思われる若夫婦。元気に「ごちそうさま」と声をかけ、帰り際におかあちゃんにこう聞いた。
「味噌汁がすごくおいしかったんですが出汁は何を使っているんですか?」
昔のおかあちゃんだったら天真爛漫に答えたのだろうが、
堅い表情で「申し訳ありません」と一言。
そっけない。
客は「企業秘密でそんなこといえるわけないですよね」と明るく帰っていった。
息子はこのおかあちゃんと仕事するのが嫌いなわけだから、アルバイトでも雇えばいい。おかあちゃんもこんな雰囲気の中で働いているから、昔のように天真爛漫にどんどんおかわりを勧めることもなくなった。
息子の悪い接客態度の影響を受けている。
帰りに息子から「ありがとうございました」はなかった。
おかあちゃんが「ありがとうございました」といっているんだから、調理中で下を向いていて帰るのが気が付かなかったにしろ、耳はあるのだからちゃんとあいさつぐらいできるだろう。
この雰囲気、やはり、幸福堂ではおいしく食べて幸福にはなれない。
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