阪神大震災以降に日本市場に参入したシンドラー社は、公共工事でシェアを増やすしかなかった。競争入札なら一番安い値段で入札すれば仕事は取れる。
Here There and Everywhereさんのところに、鶴見税務署のエレベーター工事の入札結果が貼り付けられている。
それによると5大メーカーで一番高いのが日立製作所の1450万円、続いて日本オースチンの1320万円、三菱電機1220万円、東芝1090万円、と続き、フジテックがド~ンと安くて925万円、さらにシンドラーはフジテックより5万円安い920万円で落札している。
シンドラーによると安さの秘訣は工期の短縮などを挙げているが、品質については素人には分からない。
財政難にあえぐ国や自治体にすれば、格安のシンドラー社は願ったり叶ったりだったわけだ。こうして公共事業を次々に落として行く。
エレベーターではないが、これとはまったく逆のパターンでシェアを伸ばしているメーカーの事例がある。
同業他社よりも2~3割高い。
高い理由は例えば部材の品質にあった。他社がプラスチックを使うところをステンレスを使って強度と耐用年数を延ばした。他社が5年しか持たないところを10年品質を保証した。
導入後他社がしょっちゅうトラブルが絶えないのに、ほとんどトラブルらしいトラブルもない。さらに他社に先駆け、24時間365日メンテ体制で、アフター品質を保証した。
どんな高品質の商品を作ってもメンテナンス体制がしっかりしていないとお客様に迷惑をかける、という考えがそこにあるからだ。トラブルがあってもすぐに対応する。アフター品質で顧客満足度も変ってくる。
他社はイニシャルコストは安いが、トラブルなどで結局ランニングコストが高くつき、トータルでは安物買いの銭失いになることに気づいた。
長い目でみると、イニシャルは高いがランニングコストがほとんどかからない。しかも倍の耐用年数があることが理解され、高いけど、“安い”となったわけだ。
その結果、そのメーカーの商品は高いけどもトップシェアを誇っている。
品質を保証するためにコストは落とせない、という。
この商品が公共向けだったら、値段が一番高いので落札されることはない。
行政の競争入札制度は安物買いの銭失い状態を引き起こしている、としか思えない。
今回のエレベーター事件を起こした港区は、財政難からメンテナンスも去年から競争入札している。行政の仕事は、ただ単にコストを下げることだけに終始している。
値段と性能のコストパフォーマンスを総合評価ができる目を行政の担当者はどうやら持っていないようだ。
そういう意味で、安さだけを最優先させる行政側にも責任の一端はある。
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