子供は今年二十歳になる。
最後に会ったのは1歳になるかならないか。その時の写真がアルバムに張ってある。
男の子だった。父親に瓜二つだ。
その父親である松本竜助が自宅で倒れたようだ。脳出血で意識不明だ、という。
彼女に出会ったの23年前になる。彼女が高校を1年で中退。父親が経営する出版社に事務で入社した時だった。父親に似ることなくアイドルのような可愛さが際立った。彼女には夢があった。タレントになることだった。
両親は離婚。父親は会社を経営しているが万年赤字。社員の給料もまともに払えない。早い人なら入社して昼休みの後から来ない人もいた。1カ月続けば長いほう。社員がそれぐらい出入りが激しいので対外的に会社の信用もない。
社長令嬢とは名ばかり。貧乏生活から脱するために自分が有名になって稼ぐためでもあった。
一緒に仕事したのは数カ月だった。自分の方が先に退社。彼女もやがて退職して夢に向かった。
「オーディションに合格してモデル事務所に所属しています」という報告を聞いて、一歩ずつ夢を実現させていることに感心させられていた。
その時に出会ったのが竜介だった。
当時、紳助竜介は絶頂期。
紳助は寝る時間もないほど家に帰ってもネタを考えていた。ネタが浮かばず、イライラしているときに、当時生まれたばかりの長女が泣いてうるさいので、頭にきた紳助は顔に唾をかけたそうだ。
それぐらい常にネタを考えていたのに、竜介は仕事が終わると遊びほうけていた。
「茶~しばきにいけへんか」と竜介はナンパしまくっていた時期だ。
遊ばれてしまった。彼女は竜介の子供を身ごもってしまった。
で、彼女は決心した。
私生児として産むことを。
最後に会ったのが自宅に乳飲み子の赤ん坊を連れてきたときのことだ。うちの2番目の娘と同い年なので年を覚えている。
その後は音信不通になっている。
紳助竜介で一斉を風靡すれども、うなずくだけの相方はツービート、B&B同様にやがて用無しになり、食えなくなる。借金から自己破産するなど破天荒な人生が竜助待ち受けていた。紳助にあやかり竜介を竜助に改名すれど、最後まで負け犬人生だった。
漫才コンビ。
両方に実力がなければ長いこと芸能界を生き抜くことはできない芸能界の厳しさを紳助竜介らが教えてくれた。
改めて竜助のプロフィール写真を見たが、本当にそっくりだ。
売れない芸能人に遊ばれるほど惨めな人生はない。
彼女は今、どうしているのか、このニュースを読んでふと気になった。
追記
4月1日の午前5時ごろ、帰らぬ人となった。
合掌
学年も一緒の同い年。
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