大阪出張を終え、新大阪駅から新幹線に乗って帰京した人の話。
京都駅を過ぎたあたりだった。
赤ん坊を抱えた母親が、指定席の通路側に座っていたその人に向かって「席を譲ってもらえないか」と懇願してきた。
やさしそうな人に見えたのかも知れないが、出張を終えて疲れた身で、東京までの席を譲る気はないので、断った。
それでも引き下がることはなかった。
自由席から歩いて半ばまで来たので相手も疲れているのかも知れないが、子供を抱えているのならなおさら、指定席を取るか、新大阪発の自由席に並ぶかの二択しかない。
今、乗車しているのは博多発なので、運が悪ければ、自由席もすぐに満席になる。
丁度、車掌が通りかかった。
席を譲ってほしい、と訴えている母親に対して「鉄道法で指定席の売買は禁止されています。空いている指定席があれば、そこに座って後で指定料金を払ってもらえば、問題ありません」と説明した。
母親は「指定席料金はいくらですか?」と尋ねた。
「530円です」
「では結構です」
そのやり取りを聞いていて、この母親はただで席を譲れと言っていることが分かり、呆れるばかりだった。