生真面目に見えた還暦男には裏の顔があった。
大のキャバクラ好きだった。
馴染みにしている店にニューフェイスが入ったのは1年ほど前だった。
好みがど真ん中で、来店するたびに指名を繰り返した。
すっかりその女に嵌った還暦男は、肉体関係を持つことにも成功した。これを本当の性交と呼ぶ。
深い仲になったところで女が仕掛けてきた。
お母さんが病気でおカネが必要になった、と診断書を見せながら還暦男に泣きついてきた。
一発やっている手前もあり、無心を断ることはできず、とりあえず100万円を貸した。
女は還暦男は金づるになると確信して、理由をつけてさらに追加で700万円を引っ張ることに成功した。
都合800万円を巻き上げられた男は、昨年末ぐらいから、ひょっとして騙されているのかな、と思い始めた。
入院先の病院を聞いてもなんとなくはぐらかすからだ。
そんなある日、非通知の電話が入った。
若い女の子からだった。
「あなた騙されていますよ」
恐らく同じ店で働く女の子であることが推察で来た。
これで騙されていることを確信した。
いくばくかでも取り戻すために「弁護士を紹介して欲しい」と幼馴染に泣きついた。
ちなみに、この800万円は退職金の大半だった。
総額1300万円の退職金は500万円を奥さんに渡し、800万円を自分で管理していた。
これが奥さんに知られたら熟年離婚の危機さえある。