祝儀袋といえば、多くても10万円を入れるのが一般的だが、それ以上の金額になったらどうするのか?
正解は桐箱付きののし袋箱になる。
御覧の通り、もはや袋ではなく、箱だ。
ある文具屋にこの桐箱を買い求める客が来た。
500万円を包むためにこの桐箱型熨斗箱が必要になった。
当然、店には在庫はない。取り寄せになる。キャンセルが効かないので前金で5500円をもらった。
後日、取に来たのはヤクザだった。応対に出たのはおじいちゃんだった。
親分の出所祝いに500万円包むので必要になったことが分かった。
おじいちゃんは若い時から東映の任侠映画ファンだった。菅原文太や鶴田浩二に憧れた。自分の興味からヤクザである客にどんどん話しかけた。
「やはり任侠映画は見るんですか?」
ヤクザにすればフレンドリーに話しかけてくれたことが嬉しくて、3時間も世間話ならぬヤクザの世界の話を聞くことができた。
ヤクザは小指を落としていた。何をして落とし前をつけたのかは分からないが、小指を落とすときの心得というか下準備を聞いた。それによると痛みを和らげるために、氷水につけて感覚をなくし、木綿と糸をグルグル巻きにして、一気に落とす。
背中の刺青も見せてもらった。
高齢なので皴皴の皮膚に、背中の錦鯉も色褪せ、往年の迫力はなかった。
隠ぺいしていた自分の過去を話したい人と、ヤクザ話に興味津津のマッチング。お互い年取っていうこともあって大いに盛り上がったようだ。