年齢は35歳ぐらいの男が深夜のコンビニでバイトしていた。
勤務中に平気で鼻くそをほじるようなバカ店員で、そいつがレジにいる時は買い物をしない客もいたほど。
しばらくして、姿を見かけなくなった。
そいつが嫌いな客が、ウーバーイーツを頼んだところ、配達に来たのがまさにその男だった。
思わず玄関先で「セブンにいたよね」と声を掛けた。
「あ、は~あ」
「ウーバーは儲かるの?」と質問をぶつけた。
セブンは深夜帯だったために時給は1300円。ウーバーはそれよりも稼げてピーク時では時給換算で2000円、暇な時でも1000円にはなる、という。
コンビニからウーバーに切り替えた理由は「働きたいだけ働ける」というものだった。
自転車で朝から深夜まで1日10時間以上働き、月収は45万円にもなるようだ。
カバンの中を見せてもらうと鼻をかんだティッシュや読みかけのマンガが入っていた。食べののを運ぶのに中が汚い。
やっぱり、こいつが配達したものは「食えねえ」と心の中で叫んだ。
ウーバーに転職したのは他にも理由があった。
それは学歴。
コンビニを辞めた後、パチンコ店8社を受けて、全部落とされるレベル頭に加え、小汚い身なりではどこも採用してくれない。
彼が生まれ育ったのは山形のホールの2階の寮だった。両親がホールで働いていた。現在は生活保護を受けているので仕送りもしている。
体力だけは自信があるので体が続く限りウーバーは続ける。
「バイクで配達した方がもっと効率よく稼げるんじゃない?」
「原付の免許は10回落ちました」
やっぱり、バカだった。
立ち話が長くなった。
「次があるので仕事の邪魔しないでください」
言うべきことは言うバカだった。