健康のために新聞配達を始めたおばさんは、新聞舗の自転車では重たいので、自分で電動自転車を買った。
バッテリーは普通に使えば3~4年は持つところを業務用に使ったので、1年半ぐらいしか持たなかった。
バッテリーは4万2000円と自転車が買える値段だが、仕事のためにバッテリーを買い換えた。
ところが、バッテリー交換したばかりで、自転車を盗まれておばさんは意気消沈。配達のバイトも辞めようかと思った。
新聞舗の自転車で2週間続けたが、やはり電動でないとしんどいので辞めることを告げた。
新聞舗はチラシの作業だけでも手伝って欲しい、と慰留した。
新聞舗には50代後半のおっさんがバイトしているのだが、このおっさんが風呂へ入らないので、臭くて、臭くて、みんなこのおっさんとチラシの作業をするのを嫌がっている。
新聞舗はみんなが嫌がるおっさんが担当する日だけでも手伝って欲しい、と虫のいいお願いをした。
おばさんは、不承不承申し出を受けた。
一緒に仕事をするようになり、おっさんの身の上話も聞くようになった。
おっさんは独身ではなく、家を出て行った嫁と娘がいることが分かった。
家族写真も見せてもらった。
嫁は宝塚の女優並み、3人の娘もアイドル並みの可愛さだった。
嫁は家を出て行ったが、離婚届けにハンコを押そうとしない。
おっさんは、その理由を財産目当てと呼んでいる。
おっさんの実家の写真も見せてもらったが、室内に螺旋階段があるような大豪邸だった。実家は関西で、親は一流企業の役員だった。
おっさんは関西学院大学卒で、関西の企業に就職して転勤で千葉に住むようになった。
就職先が倒産して新聞配達のアルバイトを始めた。
おばさんは、おっさんんが風呂に入らないので、あまりにも臭い。髪の毛はベトベトで見ているだけでも匂ってくる。
風呂へ入るように説教した。
おっさんは、その言葉を受けて「暇なら洗濯と掃除を1日1万円で手伝って欲しい」と言ってきた。
1万円に喜んでおっさんの自宅へ行くと、絵にかいたようなごみ屋敷だった。
持ち家でローンは完済していた。
ごみは風呂場にも侵食して、風呂が使えない状態だった。風呂に入らない理由が分かったが、量はおばさんの手に負えなかったので、業者を頼んだ。
費用の10万円は親が振り込んだ。
家の中が片付き風呂に入り、床屋に行くと、おっさんは意外にもいい男だった。
おっさんは集金も担当していたが、人を替えてくれ、と苦情が来ることもあったほどだが、担当が替わったのか?とびっくりするぐらいの様変わりだった。
それまでおっさんは、月2回、マンガ喫茶でシャワーを浴びていた。
ゴミがなくなり、部屋がきれいになるとおっさんは寂しくなってきた。
で、結婚相談所にも登録した。
菊池桃子の再婚があったように、そんな出会いを求めている。