オレオレ詐欺から振り込み詐欺、さらには劇場型詐欺へとその手口は日々進化しているが、その根本は弱者の不安心理を煽ることは変わっていない。
ある中年男性が80過ぎの一人暮らしの母親を訪ねた日のことだった。
そこへ1本の電話がかかってきた。
母親はいつもハンズフリーにしているので会話の内容は聞こえる。
「〇〇署のものですが」と第一声は地元の所轄名を名乗った。
「ご苦労様です」と母親は応じた。
「おばあさまの口座が犯罪集団から狙われています。いますぐ、口座を凍結しないとおカネが全部盗まれてしまいます」
「え!そうなんですか?」
「この後金融庁の者から電話が入りますので、その指示に従って下さい」
警察からの電話が切れて、ものの15秒ほどですぐに電話がかかってきた。
「金融庁の者です。おばあさまの口座が犯罪に使われ、中の預貯金がすべて使われる恐れがあります。こちらで係員を派遣します。電話番号と口座番号は分かっているんですが、住所が分からないので教えて下さい」
この会話をずっと聞いていた息子はここで詐欺グループだと気づいた。
「てめー、ふざけるんじゃないぞ」と一喝した途端電話は切れてしまった。
すぐに今起こったことを所轄に連絡した。
この劇場型詐欺はこの地域では非常に横行していて、今年1月から9月まででも通報があったのは1500件に及んでいる、という。
全国ではなく、一つの市だけでこれだけの数だから、全国ともなるとその数は計り知れない。
で、独居老人宅はこういう場合、住所を聞かれたら最寄りの交番の住所を控えておいて、おびき寄せて取っつ構えるのも一つの手だ。
交番では犯人が警戒するので、空き家を劇場型詐欺を呼び込むために使うのもいいだろう。
やられっぱなしより、いかに泳がせて誘い出すかを考えた方がいい。