バカ女は山手線外回りに現れた。
浜松町を過ぎた頃だった。
バカ女のLINEの着信音のボリュームがフルなのか、耳につくようになった。着信音は絶え間なく鳴るので、余計耳障りだ。
LINEの着信音が鳴りやんだと思ったら、今度はバカ女は動画を観始めた。そう、イヤフォンを付けることなく。
スピーカーから動画の音がうるさいぐらい聞こえてくる。
我関せずのバカ女は年の頃ならアラサー。厚化粧で、派手。バカが顔に出ている。
その時、たまりかねたおばちゃんが、勇気を振り絞ってバカ女に注意した。
「イヤフォンで聞くか、動画を切ってください」
バカ女は「…」
無視を決め込む。
「マナーとして切りなさい!」とおばちゃんは声を荒げた。
するとバカ女はこう言い放った。
「ワタシ、ニホンゴワカリマセン」
「イヤフォン付けるか、切りなさい!」
無視を決め込むバカ女。
そこへ、おじさんがおばちゃんに加勢した。
「お前、何語なら喋れる」というと、英語、中国語、韓国語でバカ女に注意した。
「お前分かってんだろ」と言った日本語に、バカ女は体が反応した。
さらに、若い男性が加勢した。
「こんな、ブスで、度スケベな女はほっときましょ」
これにバカ女が「何!」と反応したものの、スピーカー音のままで動画を観続ける。
攻防は品川駅を過ぎても続いていたが、乗客もバカ女に諦めた。
バカ女は新宿で何食わぬ顔をして下りて行った。