都内に住んでいて、小学校から地元を離れない50過ぎたおっさん5人が地元の居酒屋に集まって飲んでいた。
すると、向こうの方から四小の話しをしている声が聞こえてきた。四小とはそのおっさんたちの母校である。声の方を見るとおばさん4人組だった。
おっさんの一人がおばさんグループに「四小出身なの?」と声を掛けてみた。
「そうです」
「何年入学?」
「昭和45年です」
「一緒じゃん、同級生じゃん」
お互いにおっさんとおばさんに変わり果てているので、すぐには同級生と気づかなかったが、4クラスしかなかったので、一緒のクラスにはなったことがなかったにせよ、すぐに打ち解けて、一緒に酒盛りが始まった。
話しは中学校時代の話になった。誰と誰が付き合っていたか。
昨日食べたものは思い出せないが、思春期の記憶というものは一瞬のうちに蘇って来た。
酒もどんどん空になった。酔う内におばさん軍団も口が軽くなって来た。
おばさん4人のうち×1は2人。
そのうちの一人が問わず語りに身の上を話し始めた。
「離婚したばっかりで、寂しかったので、昔付き合っていた同級生の名前をネットで検索したら出てきたの。それで興信所に30万円払って、今の彼がどうしているか調べてもらったの」
四小出身者はそのまま地元の中学へ進み、高校も地元の公立へ行くものが多かった。おっさん連中も相手の名前を聞いてすぐに思い出した。
高校時代はアリスのコピーバンドをしていて、男はボーカル。当時は結構モテた。
興信所は現在の男の写真の他に、今の仕事などをきちんと調べてくれていた。男は今でも歌を歌っていた。歌手になる夢をまだあきらめてはいなかった。
駅前で路上ライブをやっている、というので会いに行った。
事前に興信所から現在の写真をもらっていたが、そこにはハゲて変わり果てた男の姿があった。
路上ライブを聴いたが、「下手くそ。これじゃ売れないわ」。
ハゲ写真を見て、会いたい気持ちも冷めていたが、歌を聴いて現実に引き戻された。
「あの姿を見ていると痛くてしかたなかったのよ。昼間はあの歳でコンビニでバイトよ。30万円がもったいないわ」
離婚の寂しさを紛らわすために、昔付き合っていた男と再開して、あわよくば、と思ったが、その前に熱はすっかり冷めていた。
おばちゃんグループの一人が思わずこう口走った。
「5万円出して男を買った方がよかったんじゃない?」
「そういう北見は男を買ったことがあるの?」
「おもちゃは買ったことあるわ」
「君たちは旦那に構ってもらえない女の寂しさなんか知らないでしょ」
酒が回るごとに話はどんどん下ネタへ。
結局、居酒屋をカップルになって出て行くものは誰一人としていなかった。