杭打ち偽装は、戸建て住宅にも影響を及ぼしている。話すのは設計事務所の関係者。
3階建てで1階が事務所、2階から3階が住居。25年以上前に建てた施主(80代)から一本の電話が入った。
「うちの家が傾いていないか調べてくれ」
この施主からは値切りに値切り倒され、200万円ほど値引きしていた。設計事務所はそのことはもう忘れているが、施主本人はよく覚えている。
値切ったがために、手抜き工事をされているのではないか、と心配になってきたのだ。
この年寄りは親から職人だけは値切るなと教えられていたのだが、いざ、その時になるとその教えを忘れていた。
建築費を値切ったが、大工には毎日、茶菓子を持って行っていた。
設計事務所は「ホームセンターで水平器を買ってそれで調べたらどうですか」とアドバイスした。
調べてみると傾きはなく、安心したのだが、年寄り仲間にその話が伝わり、水平器を貸して欲しい、といってきた。
調べてみると傾きがある家が出てきた。
その家は築40年で、傾きが出ても仕方のないような家だった。
杭打ち偽装にしてもここに帰結する。職人をいかに使うか。職人がいかに気持ちよく働ける環境を作るかにかかっている。