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by tetorayade

虫の知らせ

虫の知らせとはこのことだ。ふと、元同僚に会いたくなって、彼の自宅近くの仕事を作り、終わったところで電話を入れた。

自宅にいたが声に元気がない。

これから行く旨を伝えて電話を切った。

自宅に向かったのは3年ぶりか。

部屋が散らかっている、ということで近所のサイゼリアに行って互いの近況報告を行った。

話が一段落したところで「びっくりせんといてんな」と急に神妙な面持ちになった。

「実はボク、末期がんやねん。4月に胃の調子が悪いので、軽い気持ちで近所の病院へ行ったら、末期がんと診断されたんや。先生はすぐに手術せなあかん、と。セカンドオピニオンが聞きたいと思ってもっと大きい病院へ行ったら、『手術しても完治しない。リンパで他にも転移しているので、胃を切除しても治らない』というんや。それで手術はせんことにしたんやが、今は抗がん剤でがんの進行を抑えている。その時後1年ぐらいの余命やといわれたんで、後、半年の命や」

テーブルを挟んで目の前にいる姿は、末期がん患者には見えない。痩せているのは元々。

こうして、話せるようになったのは、末期がん宣告を受けて半年も経ったからだ。

それこそ、末期がん宣告を受け、目の前が真っ暗になり3カ月は何もする気にもならず、廃人のような生活を送っていた、という。

時間が経つに従って落ち着きを取り戻し、人と会うこともできるようになった時期だった。

やはり、これを虫の知らせ、というのだろう。

終活も終わり、大切なことはパソコンの中に書き残している、という。

抗がん剤治療を始めると2週間ぐらいは動けなくなるので、その前に、来週は奥さんと山陰へ旅行に行く計画を立てている。

「抗がん剤の副作用で、何を食べても味がしないんや。本当なら旅行の楽しみは食事なんやけどな」

最近始めたのが趣味の絵を描くこと。風景画を中心に何枚も描いている。中には新婚当時の2人の写真を見て描いた自分たちの姿もある。

人物画は自分でも「得意ではない」というぐらいのレベルで、奥さんも「似ていない」といわれたそうだが、その絵には愛情と奥さんに対する感謝の気持ちがあふれていた。

「何も悪いことはしたことがないのに、呪われているんかな。来年還暦やけど、それまで生きていられるかな…」

大好きな酒は「血流がよくなり、がん細胞が活発に運動しはじめるので」とやめている。

もっと、もっと生きていた、という気持ちを抑えながら、その日を静かに待つしかないようだ。

こういうとき、どういう言葉をかけていいものか分からない。

「じゃ、また」と左手を高く上げて別れた。
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by tetorayade | 2013-11-02 00:01 | 私的ネタ | Comments(0)