3軒目のラウンジを出たところで、未知との遭遇は起こった。
ママの見送りを受けて4階から1階に降りたその時だった。目の前に一台のタクシーが止まった。
そのタクシーの右ドアから降りてきた黒シャツ姿のオールバックは、まぎれもなく北の湖親方である。寒波が来襲してかなり寒いのに、現役を退いて何年もなるのに、シャツ1枚で平気なのに驚かされる。
親方と分かるやいなや、一緒に飲んでいた新婚のHさんが「頑張ってください」といきなり握手を求めた。
無愛想で有名な親方が握手に応じ、頭を下げた。
その勢いに乗じてついでに握手してもらう。
大阪場所の責任者である親方は、大阪場所中止決定を受けて、いち早く大阪入りして、お詫びの記者会見をしていた。今は関係者やタニマチにお詫び行脚をしている最中なのだろう。
親方を見るのはもちろん初めてだが、第一印象は意外と小さい。
テレビで見る印象ではもっと巨漢かと、思っていたが、慣れないお詫びをし過ぎて一気に小さくなったのかも知れない。
Hさんはこれまで九州場所の時、中洲で何度も親方に遭遇して、その都度握手を求めたが一切無視だった、という。
そんな無愛想で有名な親方が握手に応じるだけでなく、頭を下げたのだから大きな変化でもあろう。
ま、八百長問題が発覚して、大相撲の存続が危ぶまれている中で、普段通りの無愛想な態度でも取ろうものなら、たたまち、このようにブログに書かれる。
その辺は無愛想親方も自覚している、ということであろう。
今日の飲み会はHさんがある人を紹介するために、セッティングしたものである。
1軒目はHさんお勧めの創作中華の美味しい店を案内してもらった。
カウンターに8人も座れば満席の小さい店。
好き嫌いから聞いてくれて調理にかかるお任せコース。
店に入ったときから大将の顔と声に見覚え、聞き覚えがある。でも思い出せない。
ビールを1本空けた頃、「大将のことどっかで見たことがあるんですが」と声をかけてみた。
以前やっていた店の場所とテレビに出たことを明かしてくれたが、その時はテレビで見たのかな?というぐらいにしか思っていなかった。
創作コース料理がどんどん出てくる中で、「!」。
やっと思い出した。
サラリーマン時代、たまに昼飯で行っていた中華料理屋の大将ではないか。会社からはかなり離れているが中華が食べたくなると足を運んだ。そんな記憶がまざまざと蘇ってきた。
店はビルが建つことで移転を余儀なくされたのだが、それがもう5年前だという。
これはひさかたぶりの遭遇だった。
この日は最後に落ちがある。
昼前、非通知でケータイに電話が入る。
出てみるとお世話になっている会長からで「今晩どうですか?」と飲み会の誘いだった。
きょうはHさんとの約束があったので断った。
で、Hさんとの飲み会がお開きになった時に、運転手つきのプレジデントが目の前をゆっくり走り出そうとしている。その車を見送る人たちの中に見覚えのある顔。
すかさず、車に近づき窓を軽く叩いた。
ウィンドーがゆっくり開き会長の顔。
会長も自分の顔を見て驚いていた。
「こういいうことだったんです」
Hさんに紹介してもらった人もやはり共通の知り合いが何人かいた。
色々な意味での遭遇の日だった。
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