初対面なのに慶応大学商学部の裏口入学で入れなかったことをあっけらかん、と自らが告白した。
お城を借景にする本社事務所で、若き二代目専務のインタビューが一段落したときだった。
略歴を改めて聞いた。最終学歴はUCLA留学。卒業ではない。
「前年に商学部の裏口入学がバレて、そのルートが使えなくなった。バレていなかったら慶応ボーイだったのに」
本人に罪悪感はまるでない。裏口入学は、カネが有り余っている親がバカ息子のために、はした金を使う感覚で大金は簡単に用意できた。
慶応の裏口は既定路線だったが、それが使えなくなり体裁を整えるために選んだのがUCLAだった。、アメリカは名門校でも入学だけはできる。元々卒業なんかする気もない。4年間遊んで帰国して「留学」と箔をつけた。
裏口は慶応だけでなく、早稲田の商学部でもあった。その実態をテレビでやっていた。
手口は裏口斡旋グループがあり、大学職員が当直の日に保管されている答案用紙を差し替える、という原始的な方法だった。従来はこの方法を使っていたが、職員の配置転換で使えなくなった。
そこで新たに思いついたのが、印刷所から入試問題を盗む方法だった。
裏口斡旋グループは、印刷所の工員に目をつけ、おカネで巻き込む。目をつけた工員は監視する立場にあったので、印刷中の問題用紙を盗むのも容易だった。
服の中に隠し持つと一旦、自分のロッカーへ隠した。
印刷所は問題用紙が外部に持ち出せないように、仕事が終わるとボディーチェックがある。厳戒態勢が解けたところで、ロッカーへ隠し持っていた問題用紙を外に持ち出した。
成功報酬は50万円だと思っていたら500万円だった。あまりの大金に工員は怖気づく。
問題用紙は斡旋グループにより何枚もコピーされた。
これで7450万円のおカネが動いた。
模範解答は東大生に依頼する予定だったが、忙しくて断られる。次に白羽の矢が合ったのは早大生だった。
発覚した理由は、模範解答を書いた早大生の告発だった。
「事前にこの問題を解いたことがある」と大学に申し出た。
後は芋ズル式。解答が一字一句同じだった受験生は9人いた。当然のことながら合格が取り消されたほか、在校生13人、卒業生42人が入学、卒業を取り消される。
1人、1000万円出しているケースもあったようだが、慶応の裏口の場合はいくら用意していたのか、金額までは聞きそびれた。
先代の逝去に伴い、若くして社長に就任したが、もう何十年も会っていない。
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