新大阪駅の25番ホームでの出来事だった。
名古屋11時のアポ。乗車する新幹線は9時37分。早目に駅に着いたのでそれより1本早いのぞみの自由席にでも乗ろうかと思い、ホームを1号車方面に歩いているときだった。
6号車付近だった。
前方に、紺のスーツを着こなしたきれいな女性がこちらを向いて微笑んでいる。
「?」
一瞬、自分ではなく、自分の後ろを歩いている人に微笑んでいるのか、と思った。
後ろを振り向くでもなく、距離はどんどん近づく。
でも、その女性はずっとこっちを向いて微笑んで、声をかけている。
距離が2メートルほどに縮まった時にやっと分かった。
バイクを運転する時以外に普段はメガネをかけないが、外出した時はメガネをかけているにも関わらず、2メートルまで近づかなければ気づかなかった。
いつもと顔が違っていたからだ。
なかなか気づかなかった自分に、先方の方が気づいたようだ。
「ごめんなさい、まだ口紅を塗っていなかったので」
スッピンと化粧した時の顔の落差が激しい、というわけではない。コンパニオン出身の美人社長なのだが、ちょっと気づくのに時間がかかった。
新幹線が到着するまでの数分の立ち話。
教育研修で東京へ今から出張とのこと。
あの大手にきっちり食い込んでいる。さすがである。
美人は腹黒いというが、この美人社長もその例にたがわない。決裁権を持っている人には体当たりの営業をかけてくる。
金になる嗅覚は優れている。競合ライバルの悪口は結構いう方だ。
何度か飲んだことがある。
ビール好きで飲み始めると頻尿になる。それに対しては親近感を覚えたが、一緒に仕事をする気にはなれない一人だ。
人を踏み台にして、のし上がっていくタイプだからだ。
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