山手線外回りの出来事。
品川から代々木まで足を組んだままの中年男がいた。
品川を過ぎてどんどん客が増えてくるにも関わらず、周りの迷惑を顧みず足を組んだままだった。
前に立っている黒ズボンの男性にも足が当たり、迷惑そうな顔をしている。
駅に着くたびに乗客は増える。
一向に足を組むのをやめない。
黒ズボンの後ろの男性が、たまりかねて、足を組んでいる男のサンダルをコンコン、と蹴った。
それでも男は微動だにしない。
渋谷でギュウギュウ詰めになった。これをずっと見ていた人はそろそろ喧嘩がおっぱじまる、と思った。
喧嘩になることもなく、足を組んでいた男は代々木で降りた。
男が手にしていたのは中国語の新聞だった。
中国人なので周りに気を使うこともなく、足を組んだまま座り続けたものと思われる。