事件はホールの男子トイレで起こった。
そのホールには個室が和式1つ、洋式が1つあった。
客が便意を催した。便座に尻を付けるのが嫌いなので、和式の方を選んだ。ところ生憎塞がっていた。
客は和式でなければできないので、暫く待つことにしたが、10分経っても、20分経っても出て来ない。
客からの苦情を聞いてホールが動いた。
ドアをノックしても反応がない。
ホールのトイレは負けた客の腹いせで一番被害にあう場所だ。中からカギをかけて天井から出て行くケースもある。
下から足元を覗いてみると足はある。
「お客様、大丈夫ですか?」と声をかけてみたが、やはり反応はない。倒れている気配もない。
この間1時間。
用を足したかった客は洋室へ入った。
和式を占領していた客がトイレから出てきたのは何と6時間後だった。
20代の若者だった。
6時間も何をしていたのか、と問い詰めた。
すると意外な答えが返ってきた。
「友達4人と賭けをしたんです。トイレに5時間以上こもったら、1人1万円、全部で3万円もらえることになっていたんです」と籠城理由を明かした。
賭けは籠城するだけではなかった。1時間に1回、自分で慰めるのが条件で、しかも、その様子を動画に納めなければいけなかった。
店側は本当かどうか、動画を提出することを求めた。
すると、実際に自分でしごいている動画が収められていた。
6時間もトイレを占拠されて業務妨害で訴えたいところだが、友達の1人が常連客だったので無罪放免となった。
3万円のために6時間トイレにこもり5回もしごくとは…
ただただ呆れるばかりだった。