テリー伊藤は自らが司会するテレビ番組で、石原都知事の選挙戦術について「敵を作っていう才能を持っていますよね」と絶賛した。
選挙戦の最終日、最初で最後の街頭演説に立った石原都知事は、深刻な電力不足を背景に「無駄な電力消費」と批判の槍玉に挙がったのがパチンコと自販機だった。
東京電力管内の1日の使用電力量はそれぞれ「450万キロワット」とされているが、「2つの電力がなけりゃ、福島の原発はいらない」と訴えた。
こうして、テリー伊藤のいうところの敵にパチンコ業界と自販機が仕立てられたわけだ。
街頭演説で「自販機、パチンコやめちまえ」は一種の“選挙公約”のようなものだった。
当選後のインタビューでも、「1000万キロワットのさほど必要でもないものに電力が使用されている。生活様式を改めたほうがいい」と改めてパチンコ業界と自販機を批判した。
1000万キロワットが福島原発の発電能力に匹敵する、といいたいのだろうが、理系の人間ならすぐにそれがおかしな話と気づくはずだ。
福島第一原発の6機の原発の合計の発電力は470万キロワット。
1日の発電量は470万キロワットx24時間=11280万キロワット時。
パチンコと自販機の消費電力量は450万キロワット時。
両方合わた900万キロワット時でも、11280万キロワット時の8%に過ぎない。
キロワットとは車でいうところの最高時速のようなもので、走行距離に相当するのがキロワット時。
福島原発の最高速度は470万キロワットなので、24時間走り続けた走行距離は11280万キロワット時ということになる。
1日、11280万キロワット時の発電能力に対して、自販機とパチンコを併せても900万キロワット時の消費電力なので約8%にしかならない。
キロワットとキロワット時を混同して使っているので、おかしな話になっているが、福島第一原発の発電量と自販機とパチンコの電力消費に匹敵する、と知ってか知らずか、誤解を植えつけているわけだ。
普段からキロワットとキロワット時の違いが分かって人はそうそういない。
そもそもここで出てくる数字は、読売新聞が発表した東電管内の主な産業の1日の消費電力に基づいているものと思われる。新聞の注釈にはキロワット時となっている。
それによると、パチンコは415万キロワット時で、自販機は400万キロワット時なので、併せても815万キロワット時なのだが、それを1000万キロワットにする強引さがある。
細かい数字はどうでもよくて、福島原発の発電能力に匹敵する電力を不要不急のパチンコと自販機が食っていることを国民にアピールしたかったのだろう。
街頭演説と当選直後のインタビューで重ねて訴えた、ということはパチンコ潰しの固い決意すら感じさせる。
今回の都知事選は政策よりも、この国難といえる非常時に誰が一番リーダーシップが強いかで、選ばれた。
出鱈目な数字を並べられていきなり不要論を投げかけられた両業界は、どう反論するのか。
社会的な必要性が明確にできなければ、石原都知事の思う壺。
電力消費が問題なのではなく、パチンコ店の存在そのもを消そうとしている動きもあるが、それに同調しそうなのが、石原都知事である。
このピンチを業界が変われるチャンスと捉える人も。
昔の機械代が負担にならない時代なら、半年店を閉めても大丈夫なぐらいオーナーの財布は分厚かった、という。
その時代に戻れ、ということだ。
これから高い機械を買える店舗も少なくなるはずで、業界が変わるきっかけがこの震災だったことになる。
天災によって教えられる原点回帰でもある。
都遊協は石原発言の数字が間違っている、と反論したが、インパクトは極めて弱い。
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