目的はダイエットだった。
わずか2年で40キロの体重が80キロまで一気に増えた。原因はストレスによるドカ食いだった。
友達に悩みを相談すると、紹介されたのが痩せる補正下着だった。
販社の話しだけ聞くことになった。
海千山千の販売員は、相手が押せば買うタイプと読んだ。
「この体形は酷い」と試着を繰り返した。
セールストークは、下がったり、横に逃げた肉を集めると、位置が修正されて余分な贅肉が減る。それによって痩せる、ということだった。
相手は2人がかりで粘りに粘り、最後は根負けして契約書にサインする。
コルセット、ガードル、ブラのフルセットを2セット買うことになる。
〆て40万円也。
ここから悲劇が始まる。
ある日出張があった。買ったばかりの補正下着をフルセットでつけ、スーツを着た。
第一の悲劇は飛行場で起こった。
金属探知機ゲートをくぐった時だった。金属のものは何も持っていないのに警報が鳴った。
女性の係官にボディーチェックを受ける。
「ひょっとして?」と思い浮かぶ光景があった。
それはコルセットに付いている大量の金属のホックだった。それ例外にも金属のワイヤーが使われているので、フルで着けると重量は2キロにも及んだ。そのことをこっそり打ち明けると、係員は苦笑いした。
身体検査を受けることなく、ことなきを得た。
第二の悲劇は出張3日目に起こった。
ホテルの人が「薬でもお持ちしましょうか」と心配するぐらい顔色が真っ青で、気分が悪くなっていた。
体が締め付けられ、血行不良になっていた。
体には痣やら切り傷ができるほどだった。
補正下着を脱ぐと体がス~と楽になった。しばらくすると体調も戻った。その足で近くのコンビニへ走った。そして買ったのが男物の下着だった。
もう、これ以上体を締め付けられることが嫌で嫌でたまらなかった。
この会社の補正下着を買ったおばちゃんの中には、倒れて病院へ担ぎ込まれた人もいるほどで、まさに鎧のような補正下着である。
で、この会社は今でも存在している。
直販ではなく、販売代理店を作り、サロン形式で販売している。いわゆるマルチ商法である。
販売するには10万以上のセット購入が条件。使ってみて商品のよさを客に伝える、というのが建前。ビジネス講習を受け、会社のやりかたを洗脳されて、晴れて販売できる。
この会社の下着販売を始めると、確実に友達を失うので、ご注意を。
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